2型糖尿病治療薬であるインクレチン受容体作動薬が、肥満症治療薬として保険適用となってから約2年が経過しました。SNS 上では「ダイエット注射」「GLP-1ダイエット」などと紹介され、美容目的で使用されるケースも少なくないようです。これに対して、副作用や中止後リバウンドへの懸念に加えて、薬剤の安定供給にも影響を及ぼすとして注意を促す声が医療関係者から上がっています。体型と体質の関連について、『黄帝内経 霊枢』には、「膏」「肉」「脂」(「肥」)の記載があります。「膏」は肉が硬くなく、腹部の皮膚が緩んで肉が垂れ下がり、気が多いので陽が盛んで寒さに耐えることができる。「肉」は肉が硬く、身体が大きく、血が多いので身体が充実し、気質は平である。「脂」は肉が多くても、身体は大きくなく、血が清らかで気が滑らかで少ない、とされています。現代において、このタイプ分けをそのまま適用することが最適かどうかは別として、東洋医学では、同じ肥満という状態にあっても、体質の違いによりアプローチが異なるのが本来の考え方です。
主証と漢方薬 肥満以外の特徴
実熱タイプ
防風通聖散、大柴胡湯
・食欲旺盛でよく食べ、暑がり、便秘傾向である。
・口が渇き、冬でも冷たい飲み物をゴクゴク飲む。
・舌色が紅い。
痰湿タイプ
加味平胃散、二陳湯
・甘い物や油物、飲酒を好む。
・膨満感やときに悪心、身体が重くすっきりしない。
・舌苔が厚くベタっとしている。
気虚タイプ
防已黄耆湯、参苓白朮散
・食事量は多くなく、疲れやすい。
・身体が重だるく、動きたがらない。
・舌が胖大で、ときに歯痕がある。
兼証と漢方薬 肥満以外の特徴
血瘀タイプ
環元清血飲、通導散
・高血圧、脂質異常症、糖尿病、心血管疾患等を合併。
・ 頭痛・頭重、肩こり、爪や舌色が暗い。
肝鬱タイプ
加味逍遙散、女神散
・イライラしやすく、ストレスで過食となる。
・胸脇部の脹満感、ときに便秘。
陽虚タイプ
牛車腎気丸、五積散
・寒さ・冷えが苦手。
・高齢、足腰がだるい、浮腫みやすい。
近年、男性の肥満は有意に増加し、令和5年国民健康・栄養調査によれば、20 歳以上男性の肥満者(BMI≧25)の割合は31.5%と報告されています。
食事療法・運動療法と併せて、寒熱や虚実、気血水の巡りをととのえる漢方薬を、健やかな身体づくりの一助に是非ご活用ください。

