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人参・・・漢方薬

中国で「百草之王(生薬の王様)」や「神草」と称される「人参」は、大いに元気を補い、滋養強壮作用に優れていることから、虚証を治す要薬として古くから珍重されてきました。その働きは全身に及びますが、特に「気虚」を立て直す力が重要な特徴といえるでしょう。
元気を補う代表的な生薬
「人参」は中国東北部、朝鮮半島北部、ロシア沿海州を原産とするウコギ科トチバニンジン属の多年生植物で、夏に球状の散形花序をつくり、薄緑色の小花を咲かせます。生薬として利用されるものは根の部分で、そのまま乾燥させたものや蒸してから乾燥させたものなど、加工方法の違いによって性質が異なります。明代の医師、繆希雍は『神農本草経』で、「人参は五臓を補い、精神を安寧にし、魂魄を安定させ、驚悸を止め、邪気を除き、目を明らかにし、心を開き知恵を益す作用がある」と述べています。さらに「五臓を補うとは真気を補うことであり、すなわち五臓の全てを補うことを意味する」とし、人参の作用の幅広さを強調しました。また、同じく明代の医師で本草学者の李時珍は『本草綱目』において、人参は「色は黄色く土に属して、脾胃を補益し陰血を生じさせることから黄参、血参と呼ばれる」と解説しています。
人参は五臓の脾(消化器薬)と肺(呼吸器系)の気虚を養い、正気(邪気に対する抵抗力なるもの)を盛んにし、津液を生じさせ、気虚を補う主要な生薬です。主な効能は「大補元気」で、生命活動の原動力となる「元気」を大いに補います。元気は全身に分布し、成長や発育を促し、臓腑や組織の働きを活発にさせる働きがあります。

脾から生まれる「気」。中医学では生命活動を支えるエネルギーを「気」と呼びます。この気の多くは日々の食事をもとに、胃腸(漢方で言う脾)の働きにより生み出されます。そのため胃腸が弱ると、疲れやすさや食欲、気力の低下といった不調が現れやすくなります。人参はまさにこの胃腸の働きを支え、気を充実させる生薬です。
近年の研究においても、人参が消化機能の回復や疲労感の軽減に寄与することが示されており、古くから伝わる「補気」という考え方を裏付けるものとなっています。

補気の基本処方「四君子湯」。
人参の補気作用を語る上で欠かせないのが四君子湯です。人参、白朮、茯苓、甘草の4味からなるこの処方は、胃腸が弱り元気が不足した状態を穏やかに立て直す補気の基本とされています。胃腸の働きを整えながら少しずつ気を充実させていく漢方薬で、食欲不振や食後のだるさを感じる、疲れが抜けにくいといった人に良く用いられます。

人参と後天の精
人参は脾の働きを助ける生薬としてご紹介してきました。脾を補い、消化吸収の力を高めることで、食べたものをしっかりエネルギーに変え、「後天の精」を充実させてくれます。つまり人参は、脾を通して「後天の精」を補い体の内側から元気を支える存在と言えるでしょう。

気の巡りを助ける・五味異功散。
四君子湯に陳皮を加えたものが五味異功散です。陳皮は胃腸の巡りを整え、張りや停滞感を和らげる働きを持つ生薬です。食欲がわかない、食後にお腹が張るといった場合に、人参の補気作用を陳皮によって生かす工夫がされています。

水分の停滞を除く六君子湯。
五味異功散に半夏を加えたのが六君子湯です。半夏は胃の中に停滞した水分をさばき、胃もたれや吐き気を和らげます。六君子湯は胃腸虚弱に加えて、胃の重さやムカつきを伴う場合に用いられます。補気を軸にしながら、胃腸をより働きやすい状態へと導く漢方薬です。

さらに巡りを高める香砂六君子湯。
六君子湯に木香・縮砂を加えたのが香砂六君子湯です。これらの生薬は胃腸の働きを促し、食べ物の停滞を除く働きを持ちます。慢性的な胃腸虚弱に、食後の重さや膨満感が加わる場合、香砂六君子湯は補気と巡りの両面から体を支えます。

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