夏本番というには早い時季ではありますが、昨年6月の熱中症による救急搬送は1万 7229 人(2024 年の 2 倍以上)で、脱水症状を起こす危険性は既に高まっています。漢方医学では、汗をかいたときの症状を陰虚(陰液が不足した状態)によって生じると考えます。大量に汗をかいた場合、陰液だけではなく気も消費してしまうと考えるため、脱水状態による消耗には気陰両虚に用いられる漢方薬が適しています。
今回は、気陰両虚におすすめの漢方薬である麦味参顆粒(生脈散)をご紹介いたします。
麦味参顆粒(生脈散)
生脈散は、発汗過多などによる脱水状態から生じる機能低下・肉体疲労などに適した処方です。疲れやすく元気がない気虚の症状と、口の渇き・ほてりなどの陰虚の症状が同時にみられる気陰両虚の場合によいとされます。処方名には脈中の津液を増やすことで脈を回復させるという意味が込められており、脈が弱い方の低血圧などにも用いられてきました。
・構成生薬
3種の生薬で構成
人参……補気健脾 麦門冬……潤燥生津 五味子……収斂
人参は気を補い、弱った胃腸の回復を助けます。麦門冬は陰液を補い、渇きを潤します。五味子には収斂作用があり、汗を止め、陰液が体外に漏れることを防ぐ働きがあります。この3生薬の組み合わせが脱水状態を防ぎ、脱水による消耗を改善します。
●汗ばむ季節に用いる他処方との鑑別
➀熱症状が強い
竹葉石膏湯:咳の処方として知られていますが、軽度の熱中症にも用いられます。清熱作用のある生薬を複数含み、熱がこもっている場合にはより適しています。
②疲労感が強い
清暑益気湯:夏バテの代表処方で、無気力・手足のだるさなど疲労感が強い場合に適しています。清熱作用がある生薬も含むため、湿熱邪にも対応できます。
③汗をかきやすい
防已黄耆湯:汗かきでむくみやすく、体が重だるい方に用いられます。なお、麦味参顆粒(生脈散)に衛益顆粒(玉屏風散)を合わせることで、黄耆(益気固表)による制汗の働きも期待できます。
●夏の養生
汗をかいた後は冷房の効いた室内で体を冷やしたくなりますが、汗を拭かずに冷風が当たると体が冷えやすくなります。また、冷たいものの摂りすぎは消化機能に負担をかけ、胃腸の働きを悪くしてしまう可能性があります。脱水、ほてりなどの熱感だけでなく、暑い季節だからこそ起こる冷えにも注意が必要です。

