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サンシュユ(山茱萸)について・・・コタロー漢方 573号

サンシュユCornus officinalis Siebold et Zuccariniはミズキ科の落葉性高木で、早春、葉に先んじて散形花序に黄色の小花をつけ、秋には赤く熟する楕円形の核果(偽果)をつけます。早春の花の様子から「春黄金花(ハルコガネバナ)」、秋の実の様子から「秋珊瑚(アキサンゴ)」という別名もあります。サンシュユは中国や朝鮮半島が原産で、薬用として江戸時代(享保年間)に日本へ渡来したとされ、今日では花木として栽植されています。偽果は9月~11月にかけて赤く熟し、一見美味しそうにも見える果肉は、酸味と渋みがあり、生食には向かないようです。筆者も美味しそうな見た目に惹かれ、熟した果肉を食べたことがありますが、酸味と、特に渋味を強く感じ、一個食べきることができませんでしたとのこと。サンシュユの偽果の果肉は、生薬「山茱萸」として『第十八改正日本薬局方』に収載されています。『和漢薬の良否鑑別法及調製方』(一色直太朗編)において、「色相は紫黒色で、酸味と澁(渋)味とを有する潤ひのあるものがよろしい。陳(ふる)くなつたものや、肉の少ないものはいけませぬ。」とされています。山茱萸は滋養強壮、収斂薬として用いられ、成分としてはイリドイド配糖体(ロガニン、モロニシド)、トリテルペノイド(ウルソール酸)、タンニンなどを含みます。山茱萸は『一般用漢方製剤製造販売承認基準』に収載されている294処方のうち6処方に配合されています。腎虚の基本処方である六味丸(地黄、山茱萸、山薬、牡丹皮、沢瀉、茯苓)のほか、八味地黄丸(六味丸+附子、桂皮)、知柏地黄丸(六味丸+知母、黄柏)、杞菊地黄丸(六味丸+枸杞子、菊花)、味麦地黄丸(六味丸+五味子、麦門冬)、八味地黄丸にさらに牛膝と車前子を加味した牛車腎気丸があります。腎虚に由来する様々な症状でお悩みの方に、これらの処方をご活用いただけますと幸いですとのこと。

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