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「アダプトゲン」とは・・・コタロー漢方通信

「アダプトゲン」という言葉は、英語の「adapt(適応する)」と「-gen(もと)」から作られた造語で、様々なストレスに対する体の適応能力や抵抗力を高める効果を有する薬草などを指す用語として用いられます。1940∼50 年代、ロシア(旧ソ連)の科学者はその条件として
1,生体にとって無害である
2,各種の要因(物理的、化学的、生物学的な要因など)による生体ストレスに対する適応能力や抵抗力を高める
3,異常を起こした体を正常化させる
の 3 点を挙げています。
漢方医学では、生体がストレスに対する適応能力や抵抗力を高めることが病気の予防や治療に有効であることを古くから認識し、扶正や補気を重視してきました。高麗人参・霊芝・冬虫夏草などとともに、優れたアダプトゲンとして知られる生薬の刺五加をご紹介します。
刺五加は、北海道や中国の北東部からシベリアに生育し、日本ではエゾウコギ、ロシアではエレウテロコックと称されます。五加は『神農本草経』ですでに上品として記されていますが、使用部位は根皮が主でした。
近代になり、ロシア(旧ソ連)のオリンピック選手や宇宙飛行士の活躍をきっかけに、その根や根茎が優れた作用を有するとして、五加皮とは区別して研究が進み、広く用いられるようになりました。刺五加は、抗疲労作用・抗ストレス作用で有名になりましたが、漢方医学の薬能としても「腎気を補う」作用に優れる珍しい存在です。人体活動の根源とされる腎のはたらきは「加齢」とともに徐々にパワーが不足します。
例えば、高齢妊活で元気不足の目立つ方、中高年となり体調変化に戸惑いを感じている方など、刺五加は長寿社会を生き生きと過ごしたい方に活用されます。また、子供たちの健やかな成長のサポートや、安神作用を有しているため、治療や闘病で不安を抱えている方、ストレスが多く眠れない方にも応用されます。

【刺五加】
性:温、味:辛・微苦、帰経:脾・腎・心
薬能:補腎安神、益気健脾
主治:腎虚体弱、脾虚乏力、小児行遅、失眠多夢、健忘、腰膝酸軟、風寒湿痹など
報告されている主な薬理作用(動物実験を含む):
〇抗疲労作用:活動能力、運動速度、耐久力などの向上
〇抗ストレス作用:化学物質・温度変化など各種ストレス障害の軽減、回復力の増強
〇神経系調節作用:興奮性・抑制性の調節、情緒の安定、睡眠・覚醒の調節
〇抗炎症作用:関節炎や筋肉痛の軽減
〇その他:免疫調節、抗腫瘍作用、脂質代謝調節、糖代謝調節、心血管系への作用など

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