食欲不振の背景~香砂六君子湯と加味平胃散~
暑さや、熱中症対策の為、水分摂取量が増える季節となりました。飲食物から気を生み出す働きを司る脾の機能が低下すると、「脾は生痰の源」といわれるように、湿痰が生じ、食欲不振などを招き、暑さへの抵抗力の低下につながります。脾の働きをフォローする方剤のうち、湿痰の影響を軽減する燥湿薬を含み、共に食欲不振に使う香砂六君子湯・加味平胃散をご紹介いたします。香砂六君子湯は六君子湯に香附子・縮砂・芳香化湿薬の藿香が加わった方剤です。この3味により六君子湯と比べ、痰湿をとりのぞき、胃もたれ等の気滞を改善する働きが強化されています。
岡本一抱『方意弁義』には「胃ノ気ヲ助ケテ、胃中結滞ノ気ヲ順ラシ、胃口ヲ少シ温メテヒラク剤ナリ。…脾胃虚ニシテ宿食(食べ物が停滞している)アルモノヲ専ラ治ス。…脾胃元ヨリ怯キ(虚弱である)二因リテ、平生食ウ所ノ宜シキ食モコナレズシテ滞リアルト云ウ宿食ナリ。飽食ヨリナル食宿、食傷ノ類ハ六君子湯タチノ剤ニテ治療及ビ難シ。…此(香砂六君子湯)ノ如キ症ハ、己ガ意ニハ食ヲ好メドモ、食ニ向エバ意ニ欲スルホド食ウコト能ワザルモノナリ」とあり、香砂六君子湯は暴飲暴食からくる症状には不向きであり、使用ポイントは平素からたくさん食べることができない状態、脾虚が背景にあることが述べられています。
加味平胃散は、蒼朮・厚朴など主に痰湿をさばく生薬で構成された平胃散に、消化を促進する山楂子・神麴・麦芽が加わることで、食滞をさばく働きが強化されています。
有持桂里『校正方與輗』には平胃散について、「此ノ方消導ノ剤ナリ…。叉水穀停滞ニハ神麹、麦芽。魚肉傷ニハ山楂子。…凡ソ此方ノ症ハ、食消化セズシテ心下ニ痞塞スルニ用ヒ、マタ吐下後食毒未ダ全ク尽キザル者ニ用フ。…之ヲ要スルニ飽食膏梁(脂ののった肉などの美食)ヨリ為セル諸症皆良シ」と記載されています。平胃散は脾虚を改善することが主目的ではなく、過飲・過食により生じる消化不良による胃もたれ等に適応があることが伺え、加味平胃散もこのような状態にご活用いただけます。
平素から脾虚があり、この時期の湿度の影響が加わりさらに食欲不振が進んでいる場合には香砂六君子湯を、過飲過食による食欲不振、消化不良等には加味平胃散を、ご相談の方の病態に応じてお役立てください。
食欲不振の背景~香砂六君子湯と加味平胃散~・・・コタロー漢方通信
