現代の「ひな祭り」の源流である平安時代の「上巳(じょうし)の節句」は、単なる季節の行事ではなく、自然のサイクルに合わせて心身を整える「養生」の実践の場でもありました。
「白酒(しろき)」と桃の酒の習わし
平安の貴族たちは、桃花を漬けた「桃の酒」をよく百病を除き顔色を好まからしむ(顔色をよくする)ものとして、節句において飲む慣行がありました。桃の酒に用いられていたのは、現代の澄んだ日本酒ではなく、「白酒(しろき)」と呼ばれる濁り酒(どぶろく)の一種でした。これは「延喜式」にも記されている酒であり、醪(もろみ)を粗く濾しただけの、米の甘みが強く残る白い酒です。
「桃の酒」には、桃が持つとされる「邪気払いの力」を体内に取り込むという意味合いを持ち、季節の変わり目に身体を清めるという思いが込められていたようです。また、「桃の酒」は、平安時代によく催されていた、川上から盃を流し自分の席に流れ着くまでに歌を詠む「曲水の宴」で飲まれた、邪気を祓うため桃の花弁を添えた白酒としても記録されています。
「桃の花」の薬能
桃の花(桃花)の性味は、味は苦、平、無毒、効能は、水を利し、血を活かし、二便(大便・小便)を通すとされ、便秘の解消やむくみ解消(利尿)、さらには血行や巡りを整えることで顔色の改善(美容)に応用されています。伝統的には「桃の葉」なども健康のために活用されており、桃は象徴的な「魔除け」以上に、実質的な生理機能を助けるものとして使われています。
暮らしに活かす米麹の甘酒
現代のひな祭りに供される「白酒(しろざけ)」は、蒸したもち米や米麹を焼酎などで熟成させたアルコール飲料です。一方、米麹でつくる甘酒は、色も口当たりも白酒とよく似ていますが、アルコール度数は 1%未満です。「飲む点滴」とも称される「米麹の甘酒」は、ブドウ糖やビタミンB群、アミノ酸が豊富に含まれており、春特有の自律神経の乱れや「肝」の疲弊をサポートするエネルギー源となります。
(付録:3月の花粉情報)(平安時代にはなかった病:スギ花粉症)
3月に入り、関東から西ではスギ花粉の飛散の最盛期を迎えています。東北地方はこれから花粉飛散が本格化してきます。さらに3月後半からはヒノキ花粉も飛散が始まり、今年は全国的に大量飛散が予測されています。花粉症の方は、この時期になると、度重なるスギ花粉の暴露により鼻粘膜が荒らされて、くしゃみや鼻水より、鼻詰まりの症状が強くなり、眠気や倦怠感を伴い仕事や勉強に支障をきたします。このような時には、葛根湯加辛夷川芎や辛夷清肺湯のような、鼻粘膜の炎症を鎮め肥厚を抑えることで鼻詰まりを解消する漢方薬がお勧めです。
ひな祭りと桃の花・・・コタロー通信629
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