嘔吐・下痢の漢方
2025年の3月は感染性胃腸炎が流行しました。今年も、去年と同じく感染性胃腸炎の患者数は増加しているため対策が望まれます。感染性胃腸炎の主症状は下痢、嘔吐、腹痛、発熱です。冬から春先の感染性胃腸炎は、主にウイルスが原因となります。ロタウイルスやノロウイルスはよく知られていますが、春先には「アストロウイルス」にも注意が必要です。ノロウイルスに比べて症状は軽い傾向にありますが、集団感染しやすいとされ、学校や高齢者施設での感染が主に報告されています。高齢の方は重症化することもあるため、症状が軽いからといって軽視することはできません。早めの対策と予防が重要です。
感染性胃腸炎は特異的な治療法はなく、対症療法が基本です。下痢、嘔吐は脱水の危険があるほか、嘔吐は誤嚥性肺炎の原因にもなるため、できるだけ早く症状を鎮めることが望まれます。
嘔吐、下痢には漢方薬も選択肢に入ります。
漢方薬は腸管運動を強制的に止める働きはなく、昔から胃腸炎に使用されています。
ぜひ漢方薬をお役立てください。
●嘔吐、下痢に使える漢方薬
二陳湯(半夏・茯苓・陳皮・生姜・甘草)
胃腸の痰飲を去る代表的な処方。半夏・陳皮・茯苓の配合から、悪心、嘔吐、胃部不快感に効果が期待される。香りや味がマイルドで、吐き気がある方に使いやすい。
柴苓湯(小柴胡湯+五苓散料)
水っぽい嘔吐物、水様性の下痢、口渇を伴う急性胃腸炎に。利水作用と抗炎症作用の相乗効果が期待でき、寒熱の偏りも少ない配合のため、幅広く使用できる。
藿香正気散(二陳湯+蘇葉・藿香・白芷・厚朴・白朮・桔梗・大棗・大腹皮)
夏の胃腸風邪に用いる処方だが、急な下痢にも活用できる。二陳湯をベースに、理気薬を多く含んでおり、「正気」の名前の通り胃腸の気の流れを正常にする働きが期待される。シソ科の紫蘇や藿香を含むため、特徴的な芳香には注意が必要。
半夏瀉心湯(半夏・人参・大棗・黄芩・甘草・乾姜・黄連)
化痰剤に黄芩・黄連を配合することで、湿熱性の下痢に使用できる。吐き気があり、胸がつかえたような感じがする方の嘔吐、腹鳴を伴う方の軟便・下痢に用いられる。
葛根黄連黄芩湯(黄連・黄芩(芩連剤)+葛根・甘草)
黄芩・黄連の配合から、炎症性、湿熱性の下痢に使用できる。体の熱感、腹痛、肛門灼熱感、強い便臭、黄膩舌を伴うような場合に適している
●悪心・嘔吐がある場合の服用方法
味や匂いに敏感な方は、お湯に溶かして飲むと、漢方薬の香りで悪心・嘔吐を誘発することがあります。そのため、お湯に溶いた際は、十分冷ましてから少量ずつ服用する方法が推奨されることもあります。

