睡眠は疲れた体と心をメンテナンスし、エネルギーを補給する大切な時間です。そのため、よく眠れない状態が続くと疲労が溜まり、心身に様々な不調が現れます。不眠の症状を感じている人は、積極的に対処して、ぐっすり眠れる快眠体質を目指しましょう。
精神に関わる「肝」の不調が不眠を招きます。
適切な睡眠時間は一般に6時間から8時間が目安とされています。しかし、実際には年齢や体質、活動量などによって個人差があります。そのため、睡眠時間が短くてもすっきりして疲れが取れ、生活に支障がなければ特に問題ありません。
一方、睡眠時間の長短に関わらず寝つきが悪い、熟睡できないといった状態が続き、心身の不調や日中の眠気などを感じる場合は「不眠症」と考えます。不眠の主な症状には、「入眠困難」、「中途覚醒」、「早朝覚醒」があり、その原因は、かぜやストレス、環境変化など様々です。
漢方では、睡眠は精神状態の影響を受け、精神が穏やかに静まることでよく眠れると考えます。そのため、精神や情緒の安定と関わる「心」「肝」に不調があると、不眠を招く要因となります。また、精神の安静を保つことも大切な要素ですが、「心」「肝」は血の状態とも関係するため、睡眠との関わりは深いと言えます。その他、脳の働きや老化と関係する「腎」の不調も不眠を招く要因となります。
不眠症は重い病気ではありませんが、日中の眠気やだるさ、集中力の低下などは日常生活に大きく影響します。症状が長期化すると改善も難しくなるため、不調に気づいたら早めの対処を心がけましょう。
症状別「不眠症」の体質ケア
不眠症は体質を整え、生活習慣を改善することで緩和につながります。「早く眠らないと…!」というプレシャーが症状を悪化させてしまうことも多いので、焦らずゆっくり、日々の養生で体質を改善していきましょう
寝つきが悪い入眠困難
布団に入っても寝つきが悪く、眠るまでに時間がかかるタイプ。不眠症の中で最も訴えが多く、漢方では主に「肝」の不調から起こる症状と考えます。
肝は、精神の安静を保つ「血」を貯蔵し、ストレスをコントロールする働きがあります。そのため、肝の機能が低下すると不安感やイライラなどの精神不調が起こりやすく、なかなか寝つけなくなってしまうのです。
このタイプは過剰なストレスで「気(エネルギー)」の巡りが停滞し、体内に熱がこもりやすいことも特徴。熱がこもるとイライラや興奮を招きやすいので、こまめなストレス発散を心がけ、肝の働きを整えましょう。ハーブティーやアロマなど、香りを上手に使って気持ちをリラックスさせるのもおすすめです。
気になる症状
寝つきが悪い、初期の不眠症、イライラ、怒りっぽい、憂うつ感、ほてり、のどの乾き、
のどの閉塞感、胸の詰まり、舌の乾燥、舌辺がやや紅い
(ストレスや悩みが多い人は参考に。)
食の養生 香り、酸味、涼性の食材で肝を整える
菊花、金木犀の花、ねむの花、ジャスミン、ラベンダー、ミント、しそ、陳皮(みかんの皮)、
レモン、たけのこ、ふきのとう、セロリ、菜の花、苦瓜、わかめ、牡蠣、栗、サンザシ
酢、梅など
よく使われるのは
温胆湯、加味逍遥散、逍遥顆粒、酸棗仁湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯など
夜中に目が覚める中途覚醒
眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めてしまうタイプ。夢が多いことも特徴で、漢方では主に「心」の不調から起こる症状と考えます。
心は、精神の安静を保つ「血」を全身に巡らせる臓器。また、“心は神明を蔵ず”とも言われ、精神状態や脳の働きとも密接に関わっています。そのため、体内の「気(エネルギー)」や血が不足して心の働きが弱くなると、脳の機能に影響し、不安感や悩みなどで熟睡しにくくなってしまうのです。
このタイプは加齢とともに起こりやすくなるので、更年期以降の人は気をつけて。日々の食事でバランスよく栄養を取り、不足しがちな気・血を養いましよう。また、しっかり栄養を取るためにも、「脾胃(胃腸)」を元気に保つことが大切です。
気になる症状
眠りが浅い、熟睡できない、夜中に目が覚める、夢が多い、慢性的な不眠症、不安感、動悸、
めまい、物忘れ、冷え
(月経中、産後、病後、過労、貧血気味の人も参考に。)
食の養生 甘味、温性の食材で気・血を養う
黒砂糖、黒豆、ぶどう、ライチ、枸杞の実、棗、卵、小麦、栗、プルーン、竜眼肉、百合根
にんじん、ほうれん草、うなぎ、かつお、レバー、赤ワイン(少量)など
よく使われるのは
心脾顆粒、婦宝当帰膠、天王補心丹、甘麦大棗湯
朝早く目が覚める早朝覚醒
早朝、予定の起床時間よりずっと早く起きてしまい、その後眠れなくなるタイプ。漢方では、主に「腎」の不調から起こる症状と考えます。
腎は、生命エネルギーの源「精」を蓄える臓器で、や五臓六腑の働きを根本から支えています。そのため、腎が衰えると脳や全身の機能が低下し、睡眠も上手く取れない状態に。また、腎は潤いの源でもあるため、腎が弱くなると潤い不足で体内の熱を十分冷ませなくなることも。その結果、精神を司る「心」の熱が過剰になり、精神不安などで睡眠障害が起こりやすくなります。
腎は加齢とともに衰えていくため、このタイプは高齢者に多いことが特徴。腎を強くすることは老化予防にもつながるので、栄養を十分取る、身体を冷やさないなど、日頃の積極的なケアを心がけましょう。
気になる症状
早朝に目覚める、物忘れ、夜間頻尿、腰痛、耳鳴り、驚きやすい、
のぼせ、冷え、疲労感、倦怠感、舌の色が淡い
(更年期・中高年の不眠症、慢性疾患のある人も参考に。)
食の養生 木の実、黒色、粘りのある食材で腎を養う
黒ごま、黒豆、黒きくらげ、きのこ類、山芋、もち米、海藻類、はすの実、胡桃、
栗、クコの実、桑の実、なまこ、えび、羊肉など
よく使われるのは
八味地黄丸、八仙丸、杞菊地黄丸、瀉火補腎丸、天王補心丹、桂枝加竜骨牡蛎湯
暮らしの養生
生活のリズムを整えましょう。日中にしっかり活動することで、夜の安静につながります。
夕方以降のカフェインはNG。寝る馬円は鎮静効果のあるハーブティーがおすすめです。
アルコールは寝つきが良くなりますが、量は控えめに。飲み過ぎると眠りが浅くなります。
夕食は寝る2時間までに。食べ過ぎて胃に負担をかけないように気をつけて。
適度な運動は質の良い睡眠につながります。周2から3回でも良いので、無理なく続けられる運動を習慣に。
寝る前の入浴で身体を温めて。ぬるめのお湯で副交感神経を優位にする。
枕や布団、照明、アロマなど、眠りやすい環境を整えることも大切です。