お知らせコラム

老化による免疫低下 補剤+αで感染予防

ヒトの免疫には、自然免疫獲得免疫があります。
自然免疫は、侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞を感知し排除する仕組みで、好中球やマクロファージなどの白血球が担当します。
獲得免疫は、病原体や感染した細胞を特異的に見分け、それを記憶することで同じ病原体などに出会ったとき効果的に排除できる仕組みで、抗体産生の命令を出す T 細胞や抗体を作る B 細胞などのリンパ球が担当します。自然免疫と獲得免疫が相互に補完して、私たちの体を守っています。
加齢とともに体の機能は低下してきます。免疫も同じように低下するのですが、特に獲得免疫の機能が著しく低下することが分かってきました。その機能は20歳代頃が頂点で、40歳代で既に半分に低下するとされています。獲得免疫の機能低下により、病原体を特異的に攻撃する抗体や細胞を作ることができなくなり、ウイルス、肺炎球菌、結核菌などの感染により重症になることがしばしば起こります。また、相対的に自然免疫の細胞が増えるので、獲得免疫が未発達の赤ちゃんや幼児と似た状態になると言われています。
実際に、インフルエンザでの重症化率は、0~9歳までと50歳以降が高くなっています。漢方では、老化による様々な変化に対応する処方が多くあることは、よく知られています。この中で免疫機能の維持や向上に効果のある処方としては、補中益気湯、十全大補湯、八味地黄丸、などの補剤が先ず上げられます。先ほど、高齢者では赤ちゃんや幼児と同じような免疫と書きましたが、その面から小建中湯も弱ってきた免疫力を底上げしてくれると考えられます。さらに、日ごろからの感染症の予防対策としては玉屏風散(衛益顆粒)が有名です。
また、生体の抗体産生能力を強くサポートすると言われている炮附子、その関連で高齢者・虚弱者のかぜの妙薬の麻黄附子細辛湯などを先の補剤と合わせるのも、低下した免疫力をアップする方法と考えます。
実はこの文章は、2020年3月の新型コロナウイルス感染症の第1波の時に、未だその治療方法も確立せず、ワクチンも出来ていなかった状況で、新型コロナウイルス感染予防と感染後の重症化を漢方薬で少しでも対応できないかと思い書いたものとのことです。
しかし、当時はこのような情報を発信できる雰囲気ではなく、お蔵入りさせていたとのこと。そして、第7波のオミクロン株では、ワクチンの効果もあり感染陽性者は発症しても多くは軽症で推移するようになりました。そんな折に読み返してみて、感染症に対する漢方の基本とする考え方は新型コロナウイルス感染症でも同じであると確信して、改めてご紹介したとのことです。
それでも、感染予防が第一であることには変わりなく、手洗いうがいの励行、それと免疫力を落とさない規則正しい生活を心がけることに変わりはないとのことです。
漢方薬がその一助になれば幸いとのことです。(コタロー通信465)

タイトルとURLをコピーしました