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ゾンビ細胞を溜めずに若々しく・・・


「ゾンビ細胞」をご存じですか?これは老化しても消えずに生き続けて蓄積していく細胞のことで、その蓄積がからだの老化を加速させ、病気の発症を促すとされています。まさに「ゾンビ」のようなこの細胞。体内に溜めないようにはどうすればよいのでしょうか?
私たちの体は、37兆とも60兆とも言われる、膨大な数の細胞でできています。その一部は日々分裂を繰り返していますが、加齢などで修復できないほどダメージを受けると、分裂をやめ、新しい細胞に置き換わります。
これまで、こうした分裂をやめた細胞はそのまま死んで消えてしまうと考えられていました。ところが、近年の研究で、細胞の中には、臓器や組織の中で生き続け、炎症を起こす物質を出して体の老化を加速させる細胞があるとことが分かってきたのです。これが「ゾンビ細胞」と表現され、この呼び名と共にその存在が大きな注目を集めることになりました。
人は齢を重ねると、眼や心臓・血管・肺の疾患、糖尿病、白内障、認知症、骨粗しょう症など、さまざまな病気を発症しやすくなります。研究で明らかになってきたのは、加齢によって起こるこうした疾患の発症が、ゾンビ細胞の蓄積に大きくかかわっているということです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、高齢者や基礎疾患がある人がかかると重症化しやすいことが広く知られていますが、ゾンビ細胞の蓄積がその一因となっている可能性も指摘されています。
実はこのゾンビ細胞、中高年だけに存在するものではありません。ただ、若い人の体では、不要になった細胞を死滅させて癌を抑制したり、周囲の細胞を活性化させて傷ついた組織の修復を促したりと、体を守る働きもしているようです。若いときには、プラスの働きをしていたゾンビ細胞が、加齢と共に、老化を加速させるマイナスの面を強く出し始めるというわけです。
ゾンビ細胞はどんな人にも同じように蓄積されるわけではなく、その度合いは人によって異なります。これはつまり、ゾンビ細胞をいかに溜めないように過ごすかが老化予防の大きなポイントになる、ということです。では、どうしたらこの細胞の蓄積を防ぐことが出来るのでしょうか。
まず気を付けるべきは食事です。腸内細菌の構成は、日々の食事の内容で大きく変化します。過食や脂肪分の取り過ぎは、腸内の悪玉菌を増やし、それがゾンビ細胞の蓄積を促して、さまざまな病気の発症に結びつきます。高脂肪の食事を控えめにし、栄養のバランスを考えた適量の食事を心がけましょう。細胞の損傷に結びつく、喫煙や過渡の飲酒も控えた方がよいでしょう。適度な運動を定期的に続けるとともに、よく笑う、人と会話する、趣味を楽しむなど、ストレスを減らす工夫で自律神経を整え、免疫力を向上させることも、ゾンビ細胞の蓄積を防ぐのにとても有効です。
現在、ゾンビ細胞を除去する薬の開発に熱い期待が寄せられていますが、市場に出回るまでにはまだ時間がかかりそうです。まずは、すぐにできる予防法から実践してみて下さい。
(監修:溝尾朗 JCHO東京新宿メディカルセンター院長補佐)

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