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かじって食べる! 丸い漢方薬・・・蝋皮丸(ろうひがん)中国的生活198

生薬を煮出した苦い煎じ薬…。そんなイメージを持たれることも多い漢方薬ですが、実際には様々なタイプの薬があることをご存じでしょうか。製剤技術が進化した現代では、飲みやすい「エキス製剤」が普及し、病院でも広く処方されています。エキス製剤は生薬から抽出したエキスを濃縮したもので、顆粒や細粒、錠剤、カプセルなど、手軽に服用できるよう加工されています。薬局・薬店の店頭で見かける漢方のOTC医薬品などもエキス製剤が主流です。
一方、中国医学伝統のちょっと珍しい剤型で、現在でもそのまま使われているものがあります。それが「大蜜丸(だいみつがん)」という丸薬。生薬の粉末を蜂蜜で練って丸く固めたもので、蝋に包んであるものを「蝋皮丸」と呼びます。サイズは親指の先ほど(1.5~2㎝程度)で、大きさによって大蜜丸、小蜜丸とも呼ばれます。
中医薬の薬(剤型)の歴史を紐解くと、丸薬が医学書で確認できる最古のものは馬王堆医書(まおうたいいしょ)の「五十二病方(ごじゅうにびょうほう)」で中国最古の薬物書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」では、各種薬物の性質や産地・採集時期・加工法のほか、薬物にふさわしい剤型についても記されています。生薬の成分的な特性から、加熱に向いていないもの、揮発性の高いものなどが丸薬に加工されます。また、煎じる手前がなく、長期服用時や緊急時に用いられることが多いのも特徴の一つ。中国の宮廷歴史ドラマでは、皇帝や后が体質改善や滋養強壮のために貴重な生薬を練りこんだ大蜜丸を用いるシーンなども演出で見られます。
蝋皮丸は、丸薬を蝋で密封して長期保存できるよう工夫したもので、その形から携帯しやすいといったメリットもあり、中国では今でもごく身近に使われています。日本でもOTC医薬品として、薬局、薬店で販売されています。
ちなみに、中国の多くの友達が最初に覚える漢方薬の味は、「大山査丸(だいさんざがん)」という蝋皮丸。食べ過ぎ、消化不良などに効く胃腸の薬で、薬だけれど、山査子の甘酸っぱさと蜂蜜のやさしい甘さで、抵抗なく服用できるそう。お正月や祝日などで親類が集まると食卓にはごちそうがずらりと並び、食べ盛りの子供たちの至福の時間。食後、大人も子供もおしゃべりに興じながら大山査丸をつまんでかじる・・・・。そんな光景が今も昔も変わらず見られるのだそうです。
(中国的生活198、チャイナビュー320)

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