中国の人々にとって、梅は特別な花。「四君子(高潔で品位のある人物・君子になぞられた四つの草木/梅・蘭・竹・菊)の一つに数えられ、古くから大切にされてきました。それほどまでに愛される理由は、その清らかな花姿にあります。寒さが残る初春の頃、まだ冬景色が広がる中で、梅は百花に先立ち凛と花開きます。他の花々と争うことなく、融合もせず、寒さの中で忍耐強く咲く花。そんな気品のある孤高の姿が人々の心を魅了し、古来、多くの詩歌に詠まれてきました。
中でもよく知られるのは、梅の花を人生になぞられた「梅花香自苦寒来」という名句。梅の花の香りは寒さに耐えることで生まれるもの。人々も苦難に耐え、乗り越えてこそ成長するという意味の言葉で、現在でも、苦境にある人にかける励ましの言葉としてよく使われるそうです。
中国では花見もやはり梅が主役。まだひんやりとした空気の中、晴れた日には公園に出かけ、澄んだ青空に生える紅白の花をのんびり楽しみます。中国のドラマの中でも、雪の中、一番咲いた梅を観賞するシーンなどが良く描かれています。日本のように宴会をせず、散策しながらゆっくりと花を愛でるのが中国流。北京界隈では、明城遺跡痕公園、北京植物園・卧仏寺、響水湖長城(万里の長城を含む観光エリア)などが梅の名所として知られて、いずれも古い城壁や古寺の佇まいが梅の花によく似合い、その風景は絵を見るような美しさだそうです。
梅が見ごろを迎えるのは2月から3月頃。この時期には各地で梅の花フェスティバルなども開催されるので、日本とはまた違った梅の景色を楽しみに、花見の旅に出てみるのもいいかもしれませんね。
まるごと役立つ中国の梅事情
日本で梅といえば、梅干しや梅酒といった梅の実を使った食品が真っ先に思い浮かびます。一方、中国では烏梅(うばい)がよく知られています。未熟な梅を燻製にしたもので色は黒く、苦味があり、漢方の材料として使われるほか、夏によく飲まれる酸梅湯(さんめいたん)の原料にもなります。漢方では肺の機能低下による慢性の咳、慢性の下痢、消耗による微熱、虫下し、腹痛、嘔吐などに応用されます。中国では実だけでなく花や葉、茎、根なども余すところなく薬や食材として使われているのです。梅の花のほのかな香りは気分をリラックスさせてくれるので、初春には香りを養生に取り入れるのも良いでしょう。

