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五月病?・・・それは起立性調節障害(OD)かもしれません

5月に増悪することが多い疾患に、起立性調節障害(Orthostatic(起立性)Dysregulation(調節異常)、以下(OD)があります。春から夏にかけて悪化する傾向があり、「朝起きられない」というご相談は、OD の可能性もあります。OD は「子供の病気で、成長と共に治る」と思われがちですが、約4割の方は成人後も症状が続いているそうです。子供だけでなく、大人の OD にも注意が必要です。
OD は、思春期前後の子供に多くみられる疾患です。原因としては、血圧を調節する自律神経機能不全、思春期に伴うホルモンバランスの変化などが挙げられています。その頻度は小学生の 20 人に1人、中学生の 10 人に1人といわれ、不登校の子供の約3~4割に OD が関与しているとされています。近年、重症化と遷延化する事例が増えており、行動制限に伴う生活習慣の変化により、運動量が低下したことが一因ではないかといわれています。
症状には、起立時の立ちくらみ、めまい、倦怠感、動悸、頭痛、腹痛などがあり、午前中は症状が重く、午後になると軽快し、夜に一番元気になるという特徴があります。これは朝に向けて活発になるはずの交感神経が活性化せず、午後に遅れて活性化するためです。
その結果、夜更かしになり朝起きられないという悪循環に陥ります。治療は、塩分と水分の摂取を増やす食事指導、運動療法、低血圧治療薬や頻脈治療薬を用いた薬物治療などが行われる他、漢方薬もよく用いられています。
OD の漢方薬として有名なものに苓桂朮甘湯があります。苓桂朮甘湯は『傷寒論』を出典とする方剤で、水滞(水毒)による立ちくらみ・めまい・頭痛に用いられます。このタイプの方は、雨天や低気圧で増悪する傾向があるため、梅雨~夏にかけて体調を崩すことが多くなります。
山本巌先生の著書東医雑録(1)』には、朝はなかなか覚醒せず、夕方になると元気になる「フクロウ型体質」の方に、苓桂朮甘湯が第一選択となる旨が記載されており、OD の特徴と一致します。
一方、OD の中には水滞とは異なる原因で不調が現れる場合もあります。その一つに津液不足があります。特に夏場は気温の上昇に伴い、血管が拡張することで血圧が下がりやすくなることに加え、発汗によって体液不足になることもあります。そのような場合には、五味子で発汗過多を抑制(固渋)し、麦門冬で体液を保持(滋潤)し、人参で弱い脈を賦活(補気)する、生脈散が適しています。生脈散は「脈を生じる(生脈)」という名前の通り、古くは脱水性ショック時に脈を賦活する目的で使用されてきました。よって OD にも応用されることがあります。
OD の漢方薬にも様々な選択肢があります。(コタロー通信より)

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