お知らせコラム

今も昔も変わらない春のうつ

『黄帝内経素問』には、春三月(3 月~5 月)は「発陳」と言い、万物が芽吹き新しい志(目標)に向けて歩み出す季節で、ゆったりとした気持ちで余裕のある行動をすることと、春の養生法が記されています。春も 5 月半ばになり、新入生や新入社員、転職や引っ越し等、新しい環境で心機一転頑張っている姿がよく見られます。ただ、一所懸命張り切るばかりに、知らないうちに体にも心にもストレスが掛かり体調を崩してしまう人も見受けられます。
これを一般に「五月病」と言われていますが、これは病名ではなく医学の診断名は「適応障害」あるいは「うつ病」とされます。「適応障害」は、明確な強いストレス要因(環境変化)をきっかけに、気分の落ち込みや不安などの症状が出て、日常生活を送ることが困難になるほどの心の不調が現れる病気です。「うつ病」は、気分の落ち込みや憂うつな気分が長く続き、日常生活に支障をきたす病気で、1 日中気分が落ち込む、憂うつ、やる気が出ないなどの精神症状と、食欲不振、不眠、頭痛、動悸、肩こりなどの身体症状が現れます。「適応障害」は誰にでも起こりうる病気の一つとされ、「うつ病」の手前の状態と考えられています。ですので、この段階での対処が重要になってきます。「適応障害」の対策には、先ず心と体の休養が第一であり、原因と思われるストレスへの対処、薬物治療は少量・短期間で行うとされています。意外と思われるかもしれませんが、気晴らしの旅行は旅行計画を練ることや過密なスケジュールが反ってストレスになることもあるため、注意が必要なようです。漢方では、ストレスによる色々な症状に対する処方が準備されています。相談されるお客様(またはそのご家族)のストレスの原因をよく理解して、その対処と合わせて症状に合わせた漢方処方をお勧めすることが、肝要と思います。「適応障害」は、気の病であり肝の病とされています。気を巡らせ、肝を健やかにする処方を中心に、訴える症状に合わせた処方を選定されますようお願いいたします。
推奨される処方としては、
柴胡加竜骨牡蛎湯、
桂枝加竜骨牡蛎湯、
加味逍遙散、
抑肝散加陳皮半夏等があります。
さらに、うつ症状を「心の風邪引き」と捉えた時、お勧めしたい処方は香蘇散です。
香蘇散は心の風邪の妙薬、「気を散じ、気を快し、鬱を散ずるの剤なり。・・・」(『牛山活套』より)と言われています。
この機会に、是非、うつ症状の一つに加えていただければ幸いです。(コタロー通信より)

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