雨や台風が近づくと、頭痛に悩まされたり関節が痛んだり…。そんな天気によって現れる不調は、「気象病」かもしれません。天気の影響を避けることはできませんが、症状は軽くしたいもの。日々の養生で身体を整え、不調の起こりにくい体質づくりを目指しましょう。
気傷病の症状は「湿の停滞」が要因に
「気象病」は、天気の変化によって起こる不調の総称。気圧、気温、湿度などの変動に体がうまく対応できず、頭痛、肩こり、めまい、倦怠感、関節痛といった様々な不調が現れます。
気象病のメカニズムはまだはっきりとはわかっていませんが、天気の変化によって自律神経のバランスが乱れ、その影響で不調が起こると考えられています。特に気をつけたいのは、台風や雨が迫った時の気圧の変化、雨による湿気、季節の変わり目の気温差など。こうした気象の影響で交感神経が活発になり過ぎると、頭痛や関節痛など痛みの症状が起こる要因に。反対に、副交感神経が優位になり過ぎると、眠気やだるさ、気分の落ち込みといった不調を感じやすくなります。
気象病は雨や台風の時期に多く見られることから、漢方では、体内に停滞した「湿(過剰な水分)」が主な要因になると考えます。また「脾胃(胃腸)」の働きが弱い状態も、湿の発生につながるため要注意。その他、過剰なストレスによる「気(エネルギー)」の停滞によって、自律神経が乱れやすくなることもあります。気象病の症状は、こうした体内の不調を改善することで起こりにくくすることができます。仕方がないとあきらめず、体質を健やかに整えてつらい不調を予防しましょう。
天気の変化に備えるタイプ別「気象病」予防
・頭痛やめまいが気になる湿の停滞タイプ
体内に「湿(過剰な水分)」が停滞すると、身体や頭が重くなり、頭痛、めまい、関節痛、倦怠感といった不調を引き起こす要因となります。そのため、湿気が多く体に質が溜まりがちな雨の日は、こうした気象病の症状が起こりやすくなるのです。
食の不摂生(暴飲暴食、油っこい食事の取り過ぎ)など日頃から湿が溜まっている人は、天気の影響で不調が起こりやすく、症状も強く出やすいので気をつけて。食生活を整えながら体内の湿を取り除き、スッキリした身体を保つよう心がけてください。
気になる症状
頭痛、めまい、頭や身体が重い、むくみ、関節のこわばり、痛み、食欲不振、吐き気、おりものが多い、尿の濁り、軟便、肥満気味、舌苔がべたつく
食の養生(体の余分な水分を取り除く)
ハト麦、緑豆、春雨、もやし、小豆、冬瓜、スイカ、大根、キュウリ、とんぶり、トウモロコシの髭、ドクダミ茶、緑茶、しそ、カルダモン、あけび、オオバコなど
よく使われる漢方薬
勝湿顆粒、五苓散、香蘇散など
・疲れやだるさを感じやすい脾胃の虚弱タイプ
「脾胃(胃腸)」の働きが弱いと、水分代謝が落ちて身体に「湿(過剰な水分)」が溜まりやすくなります。湿の停滞は頭痛や関節痛などの要因となるため、脾胃の虚弱が続くと、気象病が起こりやすい状態に。また、食欲不振で体力も落ちやすく、雨の日のだるさ、疲労感などを感じやすくなることも特徴です。
このタイプの養生は、脾胃を元気にして、水分代謝の良い状態を保つことが基本。温かい飲食、消化の良い食事などを心がけ、弱った脾胃を回復させましょう。また、バランスよく栄養を摂り、体力を十分養うことも大切です。
気なる症状
気象病の不調が長引きやすい、疲労感、倦怠感、むくみ、手足のこわばり、身体が重い、めまい、胃腸虚弱、食欲不振、おなかの張り、消化不良、軟便、舌の色が淡い
食の養生(脾胃を元気にする温性・甘味の食材を)
大豆製品(豆腐、豆乳、湯葉、緑豆など)、米、栗、インゲン豆、山芋、ジャガイモ、かぼちゅ、棗、蓮の実、りんご、ミカンの皮、しそ、鰺(あじ)、ニジマス、太刀魚、豚肉、鶏肉など
よく使われる漢方薬
健胃顆粒、健脾散、清暑益気湯
・ストレス過多の偏頭痛、気の停滞タイプ
「肝」は、「気(エネルギー)」の巡りや情緒をコントロール臓器で、自律神経の働きとも深く関わっています。そのため、過剰なストレスなどで肝の機能が低下すると、気の巡りが停滞し、自律神経のバランスも乱れがちに。こうした体質で天気の影響を受けると、イライラや偏頭痛、肩こりといった不調が起こりやすくなります。
養生の基本は、ストレスを発散させて、気の巡りをスムーズに保つこと。日常生活にストレスはつきものですが、自分に合った方法を見つけて上手にコントロールしてください。ハーブティーやアロマオイルなど、香りの効果でリラックスするのもおすすめです。
気なる症状
頭痛(ストレスによる偏頭痛)、イライラ、めまい、肩こり、耳鳴り、顔の紅潮、口やのどの渇き、尿の色が濃い、尿の濁り、便秘気味、舌の色が紅く舌苔が黄色い
食の養生(ストレスを発散させ、肝の働きを整える)
菊花、クチナシ、ミント、セロリ、トマト、酢、梅、苦瓜、柿の葉茶、ハブ茶(決明子茶)、竹葉茶、緑茶など
よく使われる漢方薬
逍遥散、加味逍遥散、瀉火利湿顆粒
対処法
頭痛・めまい・関節痛を和らげる
症状がつらいときは、積極的にケアをして不調を緩和させましょう。今回は、気象病の代表的な症状「頭痛・めまい」「関節痛」の対処法をご紹介します。
頭痛・めまいなどには…
頭痛やめまいなど頭部の症状があるときは、湿邪を発散させて頭をすっきりさせることがポイント。お勧めのお茶は、ミントテイー、菊花茶、桑の葉茶、蓮の葉茶など。ゆっくりお茶を飲みながら、心身をリラックスさせましょう
よく使われる漢方薬
頂調顆粒
関節痛
関節の痛みがつらいときは、瘀血(血行不良)や湿の停滞もあわせて対処を。雨が降ると冷えやすいので、身体を温めて血行を促し、痛みを和らげましょう。はと麦、うこん、紅花、サフラン、玉ねぎ、ねぎ、らっきょう、などの食材がおすすめです。
よく使われる漢方薬
独歩顆粒
暮らしのケアで気象病予防
冷たい物は脾胃のダメージに。温かい飲食を心がけ、脾胃の働きを守りましょう。
気温差に対応できるよう、身体を温めて「陽気(体を温めるエネルギー)」守りましょう。
適度な運動を心がけて、体内の陽気が活発になり、湿が停滞しにくくなります
毎日の入浴を習慣に、血行促進、発汗による湿の除去、自律神経の調整などに繋がります。
ストレスを溜めないよう、意識してリフレッシュを。呼吸法(ゆっくり鼻で吸い、口から吐く)で気持ちを落ち着かせるのもおすすめです。
(チャイナビュー309)