夏の蒸し暑さがようやく落ち着く頃。涼しさにほっと一息つく一方で、今度は乾燥が気になります。秋から冬は空気がカラカラに乾き、体の内も外も乾燥のダメージを受けやすい時期。カサつく肌や髪はもちろん、体調も崩しやすくなるので、日々のケアで身体の潤いをキープしましょう。
夏のダメージも乾燥を招く要因に
秋になるときになるのは乾燥による不調。肌の乾燥やかゆみ、髪のパサつきといったトラブルのほか、咳や風、ドライアイ、便秘など、体内の不調も起こりやすくなります。その基本的な原因はもちろん空気の乾燥ですが、夏のダメージを引きずっていると、身体にさらに乾燥しやすくなってしまうので注意が必要です。
体の乾燥を招く夏のダメージ
・多量の汗による潤いの消耗
・食欲不振による栄養や潤いの不足
・睡眠不足による潤いの減少
・紫外線や冷房による肌の乾燥
また漢方では長夏(夏と秋の間)に影響受けやすい臓器は「脾胃(胃腸)」と考えます。夏の冷たい飲食などで脾胃に疲れがたまっていると、この時期にさらに働きが弱くなり、体内の「気(エネルギー)」「血」「水(津液)」を十分養えない状態に。すると、今度は自然界の燥邪(乾燥の邪気)が体に入り込み(外燥)、内燥+外燥のダメージでさまざまな不調が現れるようになります。燥邪が侵入すると体の潤いはさらに消耗してしまうため、放置していると乾燥トラブルが悪化してしまうことも。身体が乾燥していると感じたら、早めのケアで潤いを守りましょう。
症状別秋のトラブル対策
乾燥対策の基本は潤いを養うことですが、症状によって重点的にケアしたいポイントがあります。今回はよくある4つの乾燥症状からその養生法をご紹介するので、しっかりケアをして身体の潤いアップを目指しましょう。
肌の乾燥
肌は外気の影響を受けやすい器官。夏の紫外線ダメージでカサつきがちなところに秋の外燥が加わると、肌の乾燥はさらに進んでしまいます。一方、体内では「肺」の機能低下にも注意が必要です。「肺」は「気(エネルギー)」「血」「水(津液)」を全身に配布する働きを担っていて、肌にも潤いや栄養を届けています。ところが肺は乾燥に弱いため、秋になると働きが落ちてしまうことも。その結果、肌に十分な潤いが行き届かず、乾燥しがちになってしまうのです。
このように、秋の肌は身体の内外から乾燥のダメージを受けています。まずは潤いの多い食材を積極的に取るよう心がけ、体内の潤いアップを目指しましょう。また、保湿クリームなどで肌をケアすることも大切です。
気になる症状
肌の乾燥(カサカサ肌)、皮膚のかゆみ、シワが目立つ、手のザラツキ、かかとのひび割れ、化粧のりが悪い
食の養生(潤いを養い、肌を元気に)
オリーブオイル、りんご、バナナ、アボガド、玄米、卵、豚足、鶏の手羽先、牛筋、鶏のスープなど
良く使われる漢方薬
婦宝当帰膠
髪の乾燥
肌と同じように、夏の紫外線は髪にとっても大きな大ダメージとなります。その影響で、秋の髪はパサつきがちになり、抜け毛、頭皮のかゆみなどが現れることも。また、漢方では「髪は血の余り・腎の華」とも言われ、「血」が十分にあり「腎」が充実していれば、髪にも十分な潤いや栄養が行き届くと考えます。そのため、夏の食欲不振で血が不足していたり、過剰な冷房や睡眠不足で腎が弱っていたりすると、髪の潤いや栄養も不足しがちになってしまうのです。
このタイプの養生は、血を養い、腎を健やかに整えることが基本。腎は冷えに弱いので、暖かい飲食、服装、入浴などを心がけ、秋の冷えから身体を守りましょう。また、食欲も戻る頃なので、バランスの良い食事でしっかり栄養を摂ることも大切です。
気になる症状
髪のパサつき、髪にツヤがない、抜け毛、老け、頭皮の赤み・痒み、若白髪、足腰がだるい、腰痛、顔色が白い、疲労感、食欲不振、動悸、めまい、不眠、物忘れ、舌の色が淡い
食の養生(血を養い腎を現金にする、黒・甘味・温性の食材を)
大豆製品、烏骨鶏、卵、青魚、鮭、エビ、海藻類、黒きくらげ、ニンジン、ホウレン草、山芋、パプリカ、クルミ、棗、レーズン、クコの実、黒ゴマ、黒豆、松の実、カシューナッツなど
よく使われる漢方薬
婦宝当帰膠、麦味参顆粒、八仙丸、杞菊地黄丸、冬虫夏草
肺の乾燥
「肺」の呼吸によって外とつながっているため、乾燥した空気の影響を受けやすい臓器。「潤いを好み、乾燥を嫌う」という特徴もあるため、秋は肺にとってダメージの大きい季節なのです。肺が乾燥すると、のどがイガイガ感、空咳、風邪を引きやすい、といった呼吸系の不調が現れるように。また、肺は身体の表面に「衛気(体表にバリアを張り邪気の侵入を防ぐ働き)」を巡らせているため、肺が乾燥して働きが弱くなると、免疫力の低下につながることもあります。
このタイプの養生は、潤いの多い食材を積極的に取り、肺の乾燥を和らげることが基本。また、夏を過ぎるとつい疎かになりがちですが、きちんと水分補給をすることも大切です。
気になる症状
空咳、痰が出にくい、喘息、風邪を引きやすい、のどのイガイガ感、口や鼻の乾燥、鼻血、嗅覚の低下、舌の乾燥
食の養生(潤い食材で、肺の乾燥を和らげる)
梨、大根、レンコン、ゴボウ、銀杏、ゆり根、アーモンド、杏仁豆腐、蜂蜜、白きくらげ、葛、ぶどう、柿、みかん、バナナなど
よく使われる漢方薬
麦味参顆粒、麦門冬湯、辛夷清肺湯
全身の乾燥
夏のダメージで「脾胃(胃腸)」が弱ったまま秋を迎えると食事をしても栄養をしっかり取り込めない状態が続きます。すると、身体の潤いや栄養となる「気(エネルギー)」「血」「水(津液)」を十分に生み出せず、潤い不足や疲労感などを招くように。こうした体質で秋に「燥邪」の侵入を受けると、身体の潤いや栄養分をさらに消耗し、全身に様々な乾燥トラブルが現れるようになります。
このタイプの養生は、不足しがちな気と水を充実させ、身体の乾燥や疲労を回復させることが基本。そのためにも、弱った脾胃の働きを整えて、日々の食事でバランスよく栄養を摂ることを心がけましょう。
気になる症状
疲労感、息切れ、ドライアイ、抜け毛、食欲不振、尿量が少ない、便秘気味、憂うつ感、舌の乾燥
食の養生(気と潤いを養う、甘味・温性・潤いの食材を)
山芋、カボチャ、卵、鶏手羽、白菜、大根、白きくらげ、白ごま、クルミ、松の実、モモ、りんご、キュウイフルーツ、ブルーベリー、マンゴー、オリーブオイルなど
よく使われる漢方薬
麦味参顆粒、婦宝当帰膠、杞菊地黄丸、八仙丸、心脾顆粒
暮らしの養生
・元気な胃腸は潤いを生む基本。暴飲暴食、激辛料理や油っこいものの取り過ぎなどはNGです。
・睡眠不足も乾燥トラブルの一因に。日々睡眠は十分に取るように心がけましょう。
・保湿効果の高いおローションやクリームで、きちんとスキンケアを。
・肺を守るためにも適度な室温、湿度を意識しましょう。秋冬は加湿器なども上手に使って。
・肺と大腸はかかわりの深い臓器。肺を健やかに保つためにも、スムーズな排便を保ちましょう。
(チャイナビューから)