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耳の症状の漢方治療(コタロー通信)

耳の症状の治療に用いられる漢方処方としてまず挙げられるのが滋腎通耳湯です。原典の「万病回春」に「耳は腎の竅なり、腎虚すれば則ち耳聾して鳴るなり」と書かれており、腎虚による難聴・耳鳴に効果がある旨が示されています。また柴胡・黄芩・芍薬によって「肝」を調え、香附子・白芷といった理気薬も配合することで、ストレスが関与する難聴・耳鳴にも効果的な処方となっており、耳の症状に対して幅広く活用されています。一方で、耳の症状を治療する際は難渋することも多く、他の選択肢を用意しておくことも重要です。
今回は江戸時代の香月牛山(1656-1740)の著書「牛山活套」における「耳病」に関する記載(意訳)をご紹介いたします。
・耳の穴は腎が開竅する穴なので、耳の病は腎の病である。そのうち腎虚と腎火とを分けて論じなければならない。
・両耳が腫痛するのは多くは風熱によるものである。荊防敗毒散や荊芥連翹湯加
減を用いるとよい。細辛を少し加えると効果が高まる。
・味が濃いものを食べて胃火(胃熱)を生じて両耳が難聴となったり耳に皮膚病を生じたりするのは防風通聖散に酒で修治した大黄を加えると大変よく効く。
・両耳が急に痛み腫れる者に上焦を清熱する処方を用いて無効の場合は、藿香正気散に細辛を加えると神効がある。
・虚熱が上昇して痰気が耳の中に鬱滞して耳鳴・難聴になる者には通明利気湯(蒼朮・白朮・香附子・地黄・檳榔・山梔子・黄芩・陳皮・貝母・玄参・川芎・黄柏・黄連・甘草・生姜・木香・竹瀝)がよい。
・上焦に熱があって耳の中が化膿したり耳鳴・難聴になったりする者には蔓荊子散(蔓荊子・升麻・木通・芍薬・麦門冬・地黄・前胡・茯苓・桑白皮・菊花・甘草・大棗・乾姜)がよい。
・停耳(耳の中が腫れて炎症を起こし、鼓膜が破れて膿が流れ出るもの)には蔓荊子散や防風通聖散を鑑別して用いるとよい。小児の停耳には藿香正気散がよい。諸々の清熱剤で効果がない時は、升麻葛根湯合四君子湯に烏薬・連翹・防風・山梔子・当帰・川芎を加えると大変よく効く。
・耳鳴・難聴の者は多くは腎虚である。六味丸を用いるとよい。腎虚でかつ熱も盛んな場合は滋陰降火湯を用いると奇効が得られる。
・怒気によって耳鳴・難聴となる者には小柴胡湯合四物湯に竜胆・細辛・釣藤鈎を加味すると大変よく効く。
荊防敗毒散・荊芥連翹湯・防風通聖散・藿香正気散・六味丸・滋陰降火湯は、匙俱楽部(コタロー漢方)にもご用意がございます。以上、耳の症状を治療する際の参考になさってくさい。

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