警察庁の自殺統計において、妊娠中あるいは産後(1年以内)に該当することが把握された女性の場合、その状況に関して2022年1月より記録されるようになりました。厚生労働省より指定を受けて、自殺対策の実施に資する様々な調査研究等の活動を行っている「いのちを支える自殺対策推進センター(JSCP)」は、日本産婦人科医会と協働で資料をまとめて2024年7月に公開しています。
「いのちを育む妊産婦の危機~新たな自殺統計項目が明かす自殺の実態~」(抜粋)
・妊娠中および産後の自殺者数は、118人/2 年間(2022-2023 年)。
・自殺死亡率は、妊娠中では20-24歳が、産後では40-44歳が最も高かった。
・自殺の背景として、配偶者がある場合には、家庭問題・健康問題が多かった。
・産後自殺者の88%は配偶者があり、原因・動機として家庭問題(子育ての悩み等)に 73%が、健康問題に51%が該当していた(原因・動機は 1 人につき複数計上可)。
・産後の健康問題の中では、「病気の悩み・影響(うつ病)」が 79%で最も多かった。
(この調査の「産後」は産後 1 年以内です。)
妊娠・出産・育児はお母さんのこころに大きな変化をもたらします。産後は急激なホルモンの変化により、感情が不安定になりやすい時期です。産後10人に1人がうつ状態を経験するといわれ、5人に 1 人に不安が高まるといわれています。
「妊産婦と家族のためのリーフレット」より
漢方薬は、妊娠・出産にともなう身体の負担回復をサポートしたり、産後のこころの変調をととのえたりする一助となります。産後の不調にご活用いただける処方は複数ありますが、適用範囲の広い3つをご紹介します。
芎帰調血飲第一加減
・「産後の聖薬」と称され、ファーストチョイス
・「気血水」すべてにはたらきかけ、身体とこころの症状に
・目立った不調がなくても、産後女性には「第一加減100ヵ日」
女神散
・産前産後の精神症状や更年期症状に
・冷えはあまりなく、めまい・のぼせなど熱症状が目立つ
・加味逍遙散でおさまらないイライラ・愁訴に
婦人宝
・構成生薬の7割が「女性の宝」である当帰
・出産で消耗した「血」を補う
・芎帰調血飲第一加減や女神散などと併用されるケースも(もたれを感じやすい方は香砂六君子湯や参楂神もご活用ください)
うつ病を繰り返している方、重いうつ病にかかっていた方など、状況に応じて主治医・専門家へコンサルテーションが必要です。