秋も深まり、空気の乾燥が気になる季節となりました。この時期になると目や呼吸器、肌の乾燥感を訴える方が多くなります。いわゆる乾燥症候群(ドライシンドローム)とよばれる症状です。一般的に点眼薬や保湿剤などで対処することが多いようですが、漢方薬であれば体の内側から乾燥症状を改善することができます。乾燥症候群は、漢方的には血虚や陰虚(潤い不足)などの体質(内燥)があることで、空気の乾燥(外燥)の影響を受けていると考えます。補血や滋陰作用のある漢方薬を使用することで症状の改善が期待されます。以下に、乾燥症候群に使用される漢方薬をご紹介いたします。
■目の乾燥
・杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
腎陰を補う基本処方である六味丸に、枸杞子・菊花を加えた配合で、加齢に伴う目の不調に適しています。高齢の方の目の乾燥、かすみ、疲れにおすすめです。
・滋腎明目湯(じじんめいもくとう)
熟地黄と乾地黄の両方を配合した珍しい漢方薬です。補血・滋陰・清熱の働きを併せ持ち、目の乾燥と炎症に対応します。目のかすみ、疲れ、痛みに効果があります。パソコンやスマホなどのデジタル画面を見る時間が長い方にもおすすめです。
■呼吸器(鼻・気道)の乾燥
・麦門冬湯(ばくもんどうとう)
乾性咳嗽の代表処方です。無痰、または少量の粘稠痰を伴う方に使用されます。
・滋陰降火湯(じいんこうかとう)
補陰薬の他、補血の生薬も配合されるため、慢性の乾性咳嗽に用います。
・味麦地黄丸(みばくじおうがん)
六味丸に、麦門冬・五味子を加えた配合で、加齢に伴う呼吸器の不調に適しています。空咳、息苦しさ、慢性喘息(安定期)の体質改善などに使用されます。
※地黄の胃腸障害が心配な場合には、生脈散をご活用ください。
■皮膚の乾燥、かゆみ
・当帰飲子(とうきいんし)
乾燥による皮膚のかゆみの代表処方です。粉っぽく、色の白い皮膚に適しています。
・黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう)
カサカサした湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、不眠症に効果がある漢方薬です。皮膚を潤しながら(芍薬・阿膠・卵黄)、皮膚の炎症を鎮める(黄連・黄芩)ことができる配合です。皮膚の乾燥に加えて、赤み・炎症がある場合におすすめです。
・婦人宝(ふじんほう)
当帰を主体としたシロップ剤です。冷え症、貧血、生理不順などに効果があります。また、阿膠(アキョウ)なども配合されており、補陰作用もあります。肌や髪が乾燥して潤いがない、血虚タイプの方におすすめです。