お知らせコラム

帰脾湯の大棗について

近年はストレス社会とも言われ、無気力感や不安感を訴える方が増えています。
ストレスは食欲不振にも繋がり、一度不調に陥ると回復も難しいという状態になります。
このような症状に用いられる代表的な処方が帰脾湯です。
補気の基本方剤である四君子湯をベースに、安神薬や補血薬などを加えた気血双補剤で、
身も心も弱り、精神の疲れを持つ方に勧められる処方となっています。
今回は帰脾湯の構成生薬の一つである、大棗について紹介いたします。
大棗の基原植物はクロウメモドキ科のナツメ Ziziphus jujuba Miller var.inermis Rehder であり、
その果実を薬用部とします。果実を収穫後、
天日干しをしたものは赤に近い色となり紅棗、蒸したものは黒に近い色となり黒棗と呼ばれます。
内部が黄色で核が小さく、味の甘いものが良品とされ、脾胃の虚弱を改善し、血を養い精神を安定させる薬効があります。大棗をはじめとした甘い味の生薬は気や血を補う、緊張を緩めるという働きがあり、帰脾湯においても重要な構成生薬であると考えられます。『神農本草経』では上品に分類され、「百薬と和す」と書かれるように、大棗を構成生薬とする処方は多く、
『一般用漢方製剤製造販売承認基準』収載の 294 処方中90 処方に配合されています。
中国では生薬としてのみでなく食品としての利用も盛んで、非常に多くの品種があり、桃や栗、杏などと並んで重要な果実です。帰脾湯の安神作用には、サネブトナツメの種子を基原とする、酸棗仁も関与しています。ナツメとは植物学的に近縁関係にあり、果実の大小、果実に対する種子の大きさの比率、トゲの多寡などで見分けられます。ストレスが多く、メンタルヘルスケアが重要となる昨今、もしご興味のある方はご相談いただければ幸いです。(コタロー通信457)

タイトルとURLをコピーしました