お知らせコラム

片頭痛・緊張型頭痛と漢方

日本における片頭痛の有病率は 8.4%で、男女ともに 20~50 歳代の働き盛りに多く、全体の 74%は日常生活に支障をきたしているという調査結果があります。
また緊張型頭痛は、有病率 22.3%と一次性頭痛の中で最も一般的にみられる頭痛であり、生涯有病率は 30~78%といわれています。片頭痛のメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、ストレスや、ストレスからの解放などにより、脳内の片頭痛を引き起こすジェネレーターを刺激する、あるいは三叉神経を刺激することでその末端からサブスタンス P やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)などが発現することにより、痛みが発生すると考えられています。
一方の緊張型頭痛は、パソコン作業やデスクワークなど、長時間同じ姿勢によって首や肩の筋肉の血流が悪くなることで、神経を刺激して起こると考えられています。これらの頭痛に対して一般的には鎮痛薬の頓服による治療が行われますが、使い過ぎによる薬物乱用リスクもあります。
漢方医学では頭痛の原因は多くは血行不良や体内の水分バランスの乱れによって起こると考えます。原因や症状、体質にあった漢方薬を選択することで頭痛の頻度が減り、薬を必要とする回数も減ってゆくという経過を辿ることも多く、患者さんにとっては勿論、医療経済学的にも魅力的な治療として認知されています。日本神経学会・日本頭痛学会監修の「慢性頭痛の診療ガイドライン 2013」には、慢性頭痛診療の国際標準的な考え方が示されています。本ガイドラインEBM(Evidence-based Medicine)の考え方に基づいて作成され、Q&A(質問と回答)方式で記述されており、その中に「漢方薬は有効か」という項目があります。回答として「頭痛に対しても各種の漢方薬が経験的に使用され、効果を示している。近年では徐々に科学的エビデンスも集積されつつあり、頭痛治療に対する有効性を裏づけている」と記載されています。
具体的には、呉茱萸湯、桂枝人参湯、釣藤散、葛根湯、五苓散の 5 処方が症例集積研究以上のエビデンスをもつ文献と共に紹介され、「行うよう勧められる」として挙げられています。
頭痛に対しては、清上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう)も用いられます。原典の『寿世保元』頭痛門に、「一切の頭痛を主る方、左右・偏正(片側性の痛みと頭全体の痛み)・新久(急性と慢性)を問わず、みな効あり」と記載されており、矢数道明先生も頭痛に頻用された処方です。『臨床応用漢方処方解説』(矢数道明著)では、「風を去り、気血を巡らし、気を引き下げ、水湿を逐い、頭部の血滞を巡らし、内寒を去るという薬能を基として、風と、頭部の気血欝滞、上気、水毒、内寒などを目標として用いる」とあり、難治性の頑固な頭痛にも使ってみる価値がある漢方薬とのことです。(コタロー通信461)

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