お知らせコラム

涙が洗い流してくれるもの

感情を抑え込み、悶々としていたところ、泣くことで気持ちがスッキリした、という経験はあるだろう。悪天候に泣く、悲運に泣く、など泣くことはネガティブな使われ方も多いが、プラス面もあります。泣くときに分泌される涙を医学的には涙液と呼び、主に二つの役割がある。一つめは平常時。角膜など目の組織に栄養や酸素を供給し、異物や雑菌の侵入を防ぐ。また、角膜の表面を涙液によりなめらかな曲線にすることで、鮮明な映像を網膜に届けます。もう一つは非常時の役割。心身にとっての有害物質を排出する機能です。例えば、タマネギを包丁で切って飛散する、硫化アリルという刺激物から角膜を保護するため、大量の涙で異物を洗い流す。
排出するのは情動的なものも含まれます。涙は知らず知らずため込んでしまった情動的な異物を放出する動作ともいえます。
涙には「コルチゾール」という副腎皮質で作られるホルモンも含まれます。ストレスホルモンともいわれ、持続的なストレスによって分泌が増えると高血圧、高血糖、免疫機能の低下などを引き起こすとされる。泣くことはストレスホルモンの排出にもなる。その他、涙を流した後に「エンドルフィン」という脳内で機能するホルモンが増加するという報告もある。エンドルフィンは脳内麻薬とも言われ、鎮痛作用、気分高揚作用などが知られている。泣いた後に、気持ちがスッキリすると感じるのはこれらの複合効果なのでしょう。
何かをため込んでいる日々が続くときは、信頼できる人に話しかけたり、映画やドラマを見て泣いてみたりするのもよいでしょう。ただ、理由がわからず涙が出てしまう、ちょっとしたことで涙が抑えられない、ということが頻繫に起きるときは脳の疲労が限度を超え、思考や感情のコントロールができていない状態かもしれません。うつ病の初期症状の可能性もあります。日常生活への支障が続くときは、専門家を訪ねてほしいとのことです。(日経10/15、神田東クリニック院長 高野知樹)

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