肌寒さを感じる 12 月、耳のトラブルでお悩みの方が増えていないでしょうか。この時季は、冬の寒さにより難聴や耳鳴りが悪化しやすいといわれています。五行論(下表参照)では、耳と密接に関係しているのが「五臓」の腎(生命活動の原動力を提供する臓器)です。季節では冬が対応しており、冬は他の季節以上に腎が弱りやすく、耳の不調があらわれやすい季節と考えられます。
耳の不調の一つである聴力低下は 30-40 歳代から始まり、75 歳以上では約半数が難聴に悩んでいるといわれています。難聴・耳鳴りの原因は、加齢(腎虚と関連が深い)のみでなく、ストレス・騒音・気圧の変化なども絡んでいます。今回は難聴や耳鳴りに用いられる「滋腎通耳湯」をご紹介いたします。
・滋腎通耳湯
本剤は、10 種の生薬で構成されています。
【構成生薬】当帰・芍薬・地黄・川芎・柴胡・黄芩・知母・黄柏・白芷・香附子
補血・補陰の基本処方である四物湯(当帰・芍薬・地黄・川芎)が血を補うことで「腎」を補い(精血同源※1)、柴胡・黄芩・知母・黄柏で余分な熱を去り、白芷・香附子で気の巡りを改善します。これらの働きにより、加齢(腎虚)による難聴・耳鳴りやストレス(気滞)による難聴・耳鳴りの両方に効果が期待できます。
【適応病態】肝腎陰虚
耳鳴りの症状:高音性(キーン・ピー)or 低音性(ゴー・ジー)の音を感じてしまう難聴の症状:音・言葉が聞こえにくい、話を聞き返すことが多くなった全身症状:疲れやすい、皮膚枯燥、腰や膝の痛みやだるさ、四肢のほてり など
※1:腎精と肝血は互いに産生し、転化する関係があることから、血を補うことは間接的に腎を補うことにつながると考えられている