漢方エキス製剤の品質、安全性には、原料である生薬の品質(安全性)が大きく影響を及ぼします。
小太郎漢方では生薬の購入、受入れに際して厳正な品質試験を実施しております。特に生薬の基原に関しては、第十八改正日本薬局方の生薬総則にも『生薬の基原は適否の判定基準とする』とある通り、重要な項目となります。『日本薬局方外生薬規格2022』において、蝉退はスジアカクマゼミ、Platylomia pieli Kato 、 ミ ン ミ ン ゼ ミ 、 Tanna chekiangenesis Ouchi 、Graptopsaltria tienta Karsch、Lyristes pekinensis Haupt、Lyristes atrofasciatus Chou et Lei、コマゼミ、ホソヒグラシ、ニイニイゼミ又はそれらの同属動物(Cicadidae)の幼虫のぬけ殻であると規定されています。小太郎漢方の蝉退は中国産を使用していますが、昨夏、製造所のある石川県にて採集したセミのぬけ殻の基原確認に挑戦。セミの種の同定には、体長、足の付け根のでっぱり、触覚の節(大きさ、数、毛の生え方)、背中の盛り上がり方の確認などが必要になります。木から無理に引っ張り取ると、同定に必要な触覚や足先など細かなところが脱落してしまいますので、とても大変な作業とのこと。結果は、6 割の基原がアブラゼミ、1 割がミンミンゼミ、1 割がアブラゼミまたはミンミンゼミ(触覚脱落により分類不能)、残りはニイニイゼミ(左下写真のように泥がついている)、ツクツクボウシとのことです。石川県ではアブラゼミ、ミンミンゼミ、ニイニイゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシ、スジアカクマゼミ(日本では石川県にのみ生息、よく見られる地域から「ハッタゼミ」ともいわれる)を見ることができます。どれも上記の同属動物です。また、西日本でよく見られるクマゼミも同属動物ですので、これらのぬけ殻は全て蝉退になります。なお、泥が付着した蝉退を使用することがないように、品質試験では灰分・酸不溶性灰分を特に注意して受入れ検査を実施しています。地域や時期によりセミの割合に差が出ると思います。皆様もセミの抜け殻による基原の確認に挑戦されてみてはいかがでしょうかとのことです。(コタロー通信)