魚アレルギーに似ている“ヒスタミン中毒” とは?
細菌が活発化する夏はヒスタミン中毒が増加!
小麦に次いで、成人の新規食物アレルギー発症の原因食物の第2位となっている「魚アレルギー」。魚介アレルギーは一度発症すると、他の食物アレルギーと比べて症状の改善が得られにくいと言われてます。(参照:長崎大学病院皮膚科・アレルギー科HP→魚介アレルギー)
ところで、気温が上がってくる夏には、魚アレルギーと症状が似ているものの、別物である“ヒスタミン中毒”が増えることが報告されています。以下に、両者の違いについて紹介します。
(参照:夏に多い『青身魚のうそアレルギー』とは?アレルギー専門医が解説)
“本物の”魚アレルギーは、青身魚より自身魚の方が多い
アレルギーを起こしやすい食品として表示が推奨されている『特定原材料に準ずるもの21品目』のなかに、青身魚である『さば』が入っています。しかし、日本アレルギー学会指導医である堀向健太医学博士は、「魚アレルギーは青身の魚より自身の魚のほうが多い」と話します。魚アレルギーを起こしやすいのは、魚の筋肉に含まれた『パルブアルブミン』という蛋白質ですが、このパルブアルブミンは青身魚よりも白身魚のほうが多く含まれていることがわかっています。では、夏に多くなる「ヒスタミン中毒」とはどのようなものなのでしょうか?
ヒスタミンをそのまま食べることで生じる“ヒスタミン中毒”
サンマなど青身魚やカツオやブリなどの赤身魚の筋肉には「ヒスチジン」というアミノ酸が多く含まれています。そして魚の筋肉にいる細菌の作用で、「ヒスタミン」に変わってきます。このヒスタミンを多く含む魚を食べると、10分から90分以内に、顔が赤くなったり、蕁麻疹、動悸、頭痛、めまいなどを起こしたりします。ほとんどは3〜36時間以内に良くなりますが、まれにショックを起こすこともあり、症状としてはアレルギーとそっくりです。これが「ヒスタミン中毒」です(別名:スカムロイド中毒、サバ中毒)。ヒスタミン中毒は、食中毒症状を起こす原因として、夏に多い食中毒の原因であるビブリオ菌よりも多いのではないかという統計結果もあるくらいです。
温度が上がると細菌の働きが活発化してヒスタミンがたくさん作られる
アレルギーとは、肥満細胞の表面にIgE(免疫グロブリン)というタンパク質が付着し、アレルゲン(抗原)と反応してヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることで生じます。一方、ヒスタミン中毒は、ヒスタミンが増えていない新鮮な魚を食べた場合は症状がでず、また“免疫的な働き” が起こっていないのでアレルギーとは言いません。ヒスチジンからヒスタミンをつくる細菌の多くは、摂氏30〜37度程度の環境を好む性質があり、夏の暑い時期に赤身魚などの食材を室温で長時間放置すると、急激に増殖して、ヒスタミンを大量に生み出してしまいます。ヒスタミンは、においや見た目で判断することが難しく、一度つくられたヒスタミンは、加熱しても、冷凍しても、燻製しても分解されることはないため、①生の赤身魚は常温で放置しない。②冷蔵の場合でも、できるだけ早く食べる。③赤身魚の干物など加工品も、低温保存する。など、低温管理に気をつけて、増やさないようにすることが重要です。
夏季は湿度と気温が上昇し、「ヒスタミン」を作る細菌以外にも、多くの細菌が増殖しやすい環境になります。「黄色ブドウ球菌」は、食品中で増殖するときに「エンテロトキシン」という毒素をつくり、この毒素を食品と一緒に喫食することにより食中毒が起こります。黄色ブドウ球菌は加熱調理で十分に殺菌が可能ですが、毒素は100°C20分の加熱でも分解されませんので注意が必要です。