近年になり、全身の状態が口の健康と関連することが知られ、
口腔内科学として様々な研究・発表が行われるようになりました。
2012 年 4 月には、初めて 7 種類の漢方薬が「薬価基準による歯科関係薬剤点数表」に収載され、
現在では「立効散、半夏瀉心湯、黄連湯、茵蔯蒿湯、五苓散、白虎加人参湯、排膿散及湯、葛根湯、芍薬甘草湯、補中益気湯、十全大補湯」の 11 種類が収載されているとのこと。
漢方薬を口腔疾患で使用することは、最近のことであるかのように思われるかもしれませんが、
実は古くから口腔疾患に漢方薬が利用されてきました。口腔疾患の治療と人類の歴史は古く、
殷墟の甲骨文(紀元前 14~11 世紀頃)には「虫」と「歯」を組み合わせた甲骨文字が発見されており、当時から虫歯が認識されていたとのことです。
馬王堆から出土した前漢時代の『五十二病方』(紀元前 2 世紀頃)には、口腔疾患の名称が多く登場します。「歯痛」や「口乾」、「虫蝕(虫歯)」などの他、薬物による虫歯の充填療法「傅空」など、当時の治療法が記されています。
その後の『史記』扁鵲倉公列伝(紀元前 1 世紀頃)には、斉国の中大夫が鍼灸と煎じ薬(苦参湯)を用いた歯科治療を受けたことが記録されており、世界的に見ても口腔治療の最も古い症例と言われています。
その後の時代の『黄帝内経』では、永久歯や親知らずが生える年齢、歯が抜け落ちる年齢など、「腎気」の変化(年齢)と歯の関係に関する記載がみられ、その理論を用いて治療が行われました。
東洋医学では年齢による変化は、「腎が主る」と考えるため「歯」は腎と関連が深いと考えられています。
また、「唾」も腎の液と呼ばれ、口腔の湿潤に大きく関係していると考えられています。
先天的な腎精不足があったり、慢性病、加齢、過労などによって後天的に腎精が損なわれたりすると、歯根が露出して、歯が動揺します。
また、腎陰が不足して虚熱が発生すると歯痛や歯肉から出血が起こります。
さらに、口腔は乾燥し、舌がひび割れ(裂紋)て痛みの原因になることがあります。
口腔乾燥は口臭・虫歯を起こしやすくすることが知られています。
腎を充実させることは、口腔内の健康に寄与すると考えられているとのことです。
(コタロー通信No.445より)